世界文化遺産の「万里の長城」。ここは、富士山の現状と非常に酷似していた!!

昨年、富士山が「世界文化遺産」に登録され、2年目のシーズンも多くの登山客が訪れている。前回、ごみやトイレ問題を取り上げたが、世界遺産に登録されたことにより、登山客、観光客が非常に増え、更なる対策が懸案となっている。

富士山の件で、数年前に訪れた「万里の長城」のことを思い出した。万里の長城は、言わずと知れた、中国が世界に誇る世界文化遺産だ。富士山も同じ世界文化遺産に登録された訳だが、この万里の長城が、未来の富士山の反面教師のように、その姿が映って見えた。
富士山が、万里の長城のようにならない為にも、引き続き対策が必要と思われる。

観光客が多く訪れることにより、歴史的建造物が痛んで行く。そこにもやはり、トイレの問題が、、、。

1987年に万里の長城が世界文化遺産に登録となった。世界遺産に登録された理由は、「芸術的価値と歴史上の重要性」などが主な理由だ。

万里の長城は、紀元前3世紀頃に建設が始まり、その総延長は、2012年に発表されたデータによると、なんと21196.18kmで、現存する人工壁も6259.6kmもある。日本列島の距離(北海道から鹿児島まで)が約3000kmであるから、いかに長い距離か想像出来ることだろう。

万里の長城は地球上の建造物で、宇宙から唯一見ることの出来る人工建造物とされていたが、実際には周囲の色と区別が付きにくく、中国初の有人宇宙船「神舟5号」に搭乗した楊利偉飛行士が、「万里の長城は見えなかった」と証言したため、中国の教科書からこの節は正式に削除されたという、エピソードもある。

万里の長城を訪れて、最大の問題点と感じられたのが、富士山同様トイレ問題であった。富士山はトイレの絶対数が不足していて、裾野にはごみが散乱し汚れている為に、世界自然遺産登録申請を断念し、世界文化遺産での登録となった経緯があるわけだが、万里の長城も非常にひどい状況だった。糞尿が歴史的建造物内に垂れ流されているのだ。

不衛生さ、安全面に欠く万里の長城。富士山は万里の長城を反面教師とすべき!!

 万里の長城を訪れたのは数年前。北京から60kmと比較的近く、観光客の多い「八達峰長城(パーターリンチャンチョン)」。現在見られるのは明代(1368年~1644年)と比較的新しい時代に建築されたものだが、戦国時代からここには長城があり、遺跡も残っている。ここを訪れる前には、壁の材料として石を切り出して建築されているかと想像していたが、万里の長城は主に土と石で出来ていて、表面が焼きレンガであることを知った。

中国西部で砂漠地帯の苛酷な環境下では、壁を崩れにくくする為に、土と土の間に紅柳などの繊維質の植物を混ぜて作られていた。

やはり石とは違い、硬度的に弱い。人の往来の度に、少しずつ削られて、波打っていた。その都度修復が繰り返されている為、歴史的建造物の割には、余り古い作りではないように感じられた。これではせっかくの歴史的建造物が台無しな感があるし、富士山も登録により、登山客が増加すると、当然、富士山の環境が荒らされることになるであろう。
 
 
信じられない光景。しかし富士山も万里の長城と現状は大して変わりがない。環境整備が急務!!

この八達峰長城には「男坂」と「女坂」と言われている頂上までのコースがある。男坂は非常に道が険しく、急な勾配で這わないと進めない場所や、絶壁のような階段などがある。我こそはと意気込む男性が挑むわけだが、余りのきつさゆえに、途中で引き返す者の方が多い。その為に、男坂の方から見学をする観光客は少なく、非常に閑散としている。女坂の方も歩いたが、道も勾配があまりきつくなく、いかにも観光地という感じがして、こちらから見学する観光客が圧倒的に多い。

八達峰長城を進んで行くと、トイレが無いことに気付く。もちろんコースの頂上まで行けばあるが、途中には全く見当たらない。用を足すときはどうすればいいのだ?と思いながら道を進んだ。しばらく歩くと、当時、見張り小屋の役割をしていた「望楼」と呼ばれる場所の前まで来た。そこに近づくにつれて、なんか臭うなと思い中に入ると「まさか、ここで!?」と目を疑うような光景が飛び込んできた。なんと望楼の中で人々が用を足しており、糞尿がそのままあるのだ。数十年前の学校や、公衆便所を想像してもらえば分かりやすいだろうか。コンクリートの壁に小便をして、流れていくあのトイレだ。それがこの望楼は、そもそもトイレではない為、糞尿が流れ出る溝も無く、ただ糞尿が風化するのを待つだけになっている。これでは悪臭が漂って当たり前で、せっかくの歴史的建造物が最悪の状態となっている。訪れた季節は寒い時期だったが、これが夏の暑い季節なら大変臭うことだろう。ウェブにも出ているが「世界三大トラウマトイレ」と揶揄されている書き込みもあるほどだ。

富士山もトイレなどが完全に整備されていない為に、垂れ流し状態。整備を進めないと万里の長城を同じ道を辿り、登山道の至る所が糞尿まみれになってしまう可能性も否定できない。

蛇足だが、このようなトイレの無い場所を訪れる時のトイレ対策として、紙おむつを使用することも選択肢の一つではないだろうか。サッカーワールドカップの際に、韓国の市庁広場前に数万人のサポーターが集まっている姿を、ニュースで見ることがあるが、一旦会場に入ってしまうとトイレに行くことも出来ない為、紙おむつを使用してる人の割合がかなり多いという。しかし紙おむつを使用した弊害として、尿意を我慢する力が弱まり、おねしょをしてしまうことがあるらしい。

やはり、観光客の増加に伴う、環境の整備をしっかりしてからの世界遺産登録申請でも遅くはなかったのではないだろうか。万里の長城のようにならない為には、トイレなどの環境整備が急務である。