2006年1月、文具界に画期的な商品が発売された。今までのボールペンの概念を覆す消せるボールペン、パイロットの「フリクション」シリーズだ。これは開発された特殊なインクを使ったもので、書き間違えた時に文字通り、消せるというシロ物。しかも消しゴムのように消しゴムのカスがでない。さすが、made in Japanのとても便利な商品だ。
だが、この商品は、果たしてmade in Japan の代名詞であるハイクォリティ商品なのだろうか。なぜなら、この商品が未完成商品ではないかという指摘が意外に多いからだ。また、この商品を悪用した犯罪行為が実際に横行しているのも気にかかる。便利以上に、苦情殺到のこの商品。調査をしてあきらかになった致命的ともいえる欠陥を、実例を挙げて検証してみる。
フランスで大ヒット。
欧州の慣習が消せるペンを大ヒット商品へと導いた。しかし、この商品は完璧なのだろうか?
2006年1月に日本の文具老舗メーカー「株式会社パイロットコーポレーション」(1918年設立)から、日本に先駆けフランスでフリクションボールペン(以下、消せるペン)が発売され、現地の小学生を中心に大ヒット商品となった。日本の学校では鉛筆やシャープペンを主に使用するため、書き間違えは消しゴムで消すのが普通だが、欧州の学校ではフランスに限らず学校でボールペンや万年筆を使用するのが一般的となっている。鉛筆の出番は意外に、絵を描く時ぐらいだけだという。そのため書き間違えを消す事が出来る消せるペンの登場は、まさに待ちに待った画期的な商品だったと言えるだろう。
消せるペンが発売される以前の書き間違えは、インクキラーという化学反応で消す特殊インクを使用して消していた。しかし、インクキラーを使用した場合は同じペンのインクでは科学反応が起きるため、書き重ねる事が出来ない。そのため別のインクを使用したペンがもう1本必要で、インクキラーを合わせて3本のペンが必要となる。もちろん、更に別なインクのペンを使用すれば再度書き直しは出来るだろうが現実的ではない。ところが消せるペンの場合は、ペン尾につけられたプラスチック状の部分でこすると、摩擦熱が生じ、インクが消える上に同じペンですぐに書き直しが出来る。1本で、書く、消す、再び書くことが出来るオールインワンで済むのだ。
大ヒットの理由は「シャープな消え方、消しカスが出ない」「一本で何度でも書き消しができる」といった点が最大の要因だ。このためボールペンや万年筆が主流の欧州、とりわけフランスで必然的に大ヒット商品となったと思われる。
しかし、フランスや欧州各国ように小学生から万年筆やボールペンを使う慣習がある国ならともかく、日本のような国ではどうだろうか。学生時代は鉛筆、シャープペン、を使い、間違えたら消しゴムで消すという国とでは、環境が異なると考えられるし、中でもビジネスでは、インクというものは消えない点に必要性と重要性が感じられている。それにもかかわらず日本でも大ヒットとなったというのだから、その理由はどこにあったのだろうか。
例を挙げると、出版物の校正や設計図を作る人、音楽関係の仕事で、楽譜などに書き込みをする人達に、非常に重宝されると言われている。さらに面白いのが、さすがは漫画家だ。彼らは摩擦熱で消える特性を、ドライヤーの熱風で一気に消し去るというテクニックで「消しゴムがけ」という作業を省略している。その上、消しカスが一切出ない。普通漫画は鉛筆で下書きを書いて、ペン入れをして消してゴムで消し完成させるので、大変手間のかかる作業だった。
ところが、この消せるペンは消しゴムがけの作業が省略出来るためにかなりの時間短縮が可能となった。
また、これと同じ方法で書いた文字を裏側からドライヤーの熱風をあてて一瞬で文字を消すというマジックすらあるのだ。しかし、これが今や様々な分野で、とても使い勝手のある便利な消せるペンかのように思われているが、本当にこれが完璧な商品ならばの話である。